ダイビングの初心者がなかなか習得できないのが中性浮力です。
私もへなちょこダイバーだった頃はなかなか中性浮力のイメージがつかめませんでしたが
南国でインストラクター歴30年。
綺麗な珊瑚を見せたくて中性浮力ができないゲストにいろいろアドバイスをしてきました。
この記事では
- 中性浮力って一体なに?
- 中性浮力ができるとどんな感じ?
- 中性浮力ができるようになりたい!
- やってみたけどできない・・コツを教えて!
と言う疑問に答えつつ
中性浮力のコツや練習方法をご紹介しようと思います。
中性浮力ができるようになったらエア消費も減るしお魚のようにリラックスできるようになり疲れなくなりますよ。
中性浮力って一体なに?
中性浮力とは水中で浮きもしない沈みもしない状態のことを言います。
魚をイメージしてください。
水中の魚たちは気持ちよさそうに水中を漂いながら泳いでいます。
水面に浮いても行かない・・・
水底に沈みもしない・・・
水中で好きな所に自由に漂っていられるあの状態のことです。
スキューバダイビングでは中性浮力のスキルをマスターすることでお魚と同じように水中を漂いながら好きな所へ行くことが出来ます。
普段は陸上で地面に立つ生活をしている私達人間にとって、体験したことがない体勢なのでちょっとした慣れとコツが必要です。
中性浮力ができるとどんな感じ?
一言で言うと・・無重力に近い感じです。
初めて中性浮力の練習をすると、下へ引っ張られる重力が少なくなるのでとっても変に感じると思います。
足を踏ん張って体のバランスがとれないので、どこに力を入れて良いかわからず体がフワフワして真っ直ぐしていられなくなる人も多いです。
ダイバー
水泳などをしている方はこのフワフワした感覚をすぐにクリアできますが、全く水に親しみのない方はなかなかクリアできず体勢が落ち着きません。
この感覚に慣れ、マスターすることが中性浮力上達のコツになります。
本数を重ねるうちにその無重力感に慣れ、水に体を任せて動くことが出来るようになります。
すると陸上よりも力を使わずに漂っていられるようになり、本当に魚になったような感覚になります。
大きな力を使わないので中性浮力をマスターするとダイビングをしても疲れにくくなります。
《陸よりも力を使わないことがわかる例》
ダイビング経験の長い80過ぎのおばあちゃんの話です。
陸では杖をついて誰かに支えてもらいながら歩いていたおばあちゃんですが、一度海の中に入ると誰の助けも要らず楽しそうにダイビングされます。
水中の方がイキイキとしていて下手すると他のダイバーより泳ぐのも早いくらいです。
中性浮力がとれると陸上で歩くよりも水中の方が楽だから水中で暮らしたいと言っていました。
中性浮力ができるようになりたい!・・学ぶには5つのステップ
中性浮力を学ぶには5つのステップがあります。
- 肺を使うと浮力が調整できることを理解する(学科)
- BCで浮力を調整できることを理解する(学科)
- ウェイトを適正ウェイトに調整する(実技)
- 中性浮力を体感できる練習をし、水中での姿勢や力の入れ方に慣れる(実技)
- 体が上下しない中性浮力の呼吸を練習をする(実技)
1,2,は学科
3,4,5は実習になります。
肺を使って浮力が調整できることを頭で理解する
最初のうちはイメージしにくいと思うのですが呼吸で浮力を調整することが出来ます。
ダイバー
大前提として覚えてほしいのが・・・
*息を吸う(肺に空気を入れる)=体が浮く
*息を吐く(肺の空気を抜く)=体が沈む
水中ですでに中性浮力がとれている状態であれば息を吸えば浮かぶし、息を吐けば沈みます。
上級者であれば大体ウェイト2kg分くらいの浮力を肺の中の空気で調整できると言われています。
しかし、スキューバダイビングでは自分の体の他にタンクやウェットスーツ、ウェイト・・・
たくさん浮かぶものや沈むものをつけているので肺だけの空気量で調節するのは不可能です。
そこで必要になってくるのがBCと言うことになります。
BCで浮力を調整できることを理解する
肺での空気調整だけでは足りない空気量はBCを使って補います。補う仕組みは同じです。
ダイバー
*息を吸っても沈むのでもっと浮かびたいとき=BCの空気を入れる
*息を吐いても浮くのでもっと沈みたいとき=BCの空気を抜く
自分の肺で補えない分だけですからたくさんの量を一気に出し入れする必要はありません。
体が沈んでしまい浮きたいときにはシュッ・シュッ・と細切れにゆっくり入れて行くのがコツです。
逆に体が浮かんでしまい沈みたいときには少し多めにシューッと出します。(全部出さないのがコツ)
呼吸とBCの調節で自分の居たい水深に浮かんでいられるようになれば中性浮力のスキルOKです。
頭の中でイメージは出来ましたか?
適正ウェイトにする
中性浮力がとれるようになるには適正ウェイトにすることが大前提&一番大切
適正ウェイトにすることで潜行時に落ちるように沈んだり、浅場に移動したときに体が浮き上がったりすることがほとんどなくなります。
いちいちBCでの調整に頼らなくても良くなるのでとても楽なダイビングになります。
適正ウェイトの目安はダイビング終了前の安全停止で止まっていられるウェイト量。
よくテキストに書いてある「息を吸うと頭だけが浮いていて吐くと頭が沈む位」というのだけでは不十分でダイビングの後半に浮き気味になったり危険です。
詳しい調節の仕方は下記の記事を参考にしてください。
安全な適正ウェイトと調整の仕方【ダイビングが上達します!】 | へなちょこダイバー南国を潜る (mydivehistory.com)
中性浮力を体感できる練習をする
フィンピポッドという方法で中性浮力を感じてみましょう。
水深が浅すぎると難しいので水深10m~15m位のところで練習するのがおすすめ
- 水底にうつぶせになります。(BCの空気は空:全く浮かばない状態が理想)
フィンの先は地面につけ足は自然に伸ばします。左手はパワーインフレーターを持ち、普通の呼吸を続けます。
*息を吸っても浮かばない状態であれば3に進みます。
*息を吸って浮かび始める場合は4へ進みます。 - BCの空気の調整をし上半身だけ浮かせます。
パワーインフレーターから空気をシュッ・シュッと少しづつ入れます。
フィンは地面につけたままで手も地面につけない
上半身が少しでも浮き始めたら空気を入れるのをやめる。
浮力は2~3秒遅れて効果が出るので目標の高さまで続けて入れると入れ過ぎになります。 - 肺に空気を入れる(息を吸う)とやや浮かぶ、肺の空気を出す(息を吐く)とやや沈むという状態が出来ていればその水深でのBCの空気の調整が丁度良いということになります。
しばらく肺の調節で浮かんだり沈んだりする状態を感じでみてください。
ここまでできればしめたものです
体が上下しない中性浮力の呼吸を練習する
呼吸するたびに上下させない呼吸のタイミングを練習します。
上手に呼吸のタイミングをずらすことが上達の秘訣です。
前の項目の5の続きになります。
- 息を吸う=浮かぶ
- 息を吐く=沈む
というのが基本ですが、この浮き沈みは呼吸と2~3秒の差があります。
例えば
吸って2秒くらいすると浮かび始める、吐いて2秒くらいすると沈みはじめます。
これに同調するように呼吸を続けていると上下が激しくなります。
上下しない為には呼吸のタイミングをずらすのがコツです。
ダイバー
*沈み始める前に:息を吸う
*浮かび始める前に:息を吐く
呼吸を半テンポずらす感じです。
半テンポずらすことで上下しなくなりその場にとどまることが出来ます。
上下せずに呼吸が出来るようになったら泳ぎ出してみましょう。肺に少し多めの空気を入れて(大きく息を吸って)浮かび上がってからフィンキックをします。
その時に気を付けなければいけないことは以下の事です。
フィンキックをすると水深が少し上がるので浮かびやすくなります。
泳ぎ出す前に少しだけBCの空気を抜きましょう。慣れてくると泳ぎだしに空気を抜くことはだんだん要らなくなりますが初心者のうちは必要です。
中性浮力の効果が高い4段階の練習方法
私もできなかったのでよくわかるのですが、中性浮力は呼吸やBCの調節方法を学んだからと言ってすぐに習得できるというものではありません。
実は中性浮力を習得するには呼吸やBCでの浮力調節の仕方を学ぶよりも水中での体の使い方などの感覚に慣れ体得することの方が大切です。
体得できるとある日突然「これが中性浮力か!?」という感覚がわかる感じです。
水泳の経験がある人のほうが体得が早いのはそのためです。
早くコツをつかみたい方はこんな順番で練習をしてみましょう。
- スノーケリング装備で水面での練習
足がつかない水深まで行き自由に体を動かせるようになる - 水中で泳ぎながら浮かんでいることに慣れる
- 泳がずに中性浮力を保つ
- 水面での練習(スノーケリングの装備)で足がつかない水深で自由に体を動かせるようになる
中性浮力を習得するための最初の一歩は、水面に浮かんだまま自分の体を自由に動かせるようになることです。浮かんでいる感覚に慣れるように練習しましょう。
《練習方法1》・・すべて水面での練習です。- 水面で垂直に体を立てたあとなるべくフィンを動かさずに体勢をしばらくキープする
最初は手などを使っても良いが出来れば使わず体幹+キックで調節してみる。 - 立った姿勢からくるっと後ろ向きに方向転換する
なるべくバタバタせず体幹+キックを使う - 泳いでいた体勢からすっと立ってみる(後ろ向き・前向き)
これらの動きができるようになるにはなるべく手を使わずに体幹+キックを上手使うことがコツです。おへそ辺りや背中の筋肉をうまく使うようにして体を安定できるように頑張りましょう。
水面休息時に水面でスノーケリング(潜ってはいけない)をするのも良いですし、それが面倒ならばダイビングの時、誰よりも早くエントリーしたりして水面での時間を長くもつようにして練習してみましょう。
- 水面で垂直に体を立てたあとなるべくフィンを動かさずに体勢をしばらくキープする
- 水中で泳ぎながら浮かんでいることに慣れる
水面で自由に体を動けるようになったら中性浮力で浮かんでいる感覚に慣れましょう。
ただ何もせずに浮いていることは初心者にはとても難しいので最初は少しだけ泳ぎながら浮いている感覚をつかむようにします。
《練習方法2》
ファンダイビングでなるべく着底せずに泳ぎ続ける。
泳ぎ続けることで水中での動作が身に付きやすくなります。(慣れるようになります)
ちょっと、体勢がとれないからと着底するようでは水中での動作はうまくなりません。
泳ぎ続けることが苦でなくなれば次の練習に移ります。
《練習方法3》・・ここで大切なのは最初に中性浮力をとってから泳ぎ出すことです。- フィンピポットなどで中性浮力をとったあと水深を変えずに泳ぎます。
- 右回りに大きな円を描くように泳ぐ
- 左回りに大きな円を描くように泳ぐ
- 真っ直ぐに泳ぎ方向転換して真っ直ぐに泳いで帰って来る
初心者だけでこの練習をするのはとても難しいことだと思います。
初心者向けのダイブセンターだとこの練習に近いことをファンダイブに盛り込んでいることが多いです。
カメラ派ダイバーと一緒の潜り方だと止まって着底して待っていることが多くなるので中性浮力の上達が遅くなったり下手すると全く上達しません。
出来ればあまり止まらない泳ぐファンダイブをしてくれるダイブセンターを探して潜るのが理想です。
- 動かずに中性浮力を保つ
泳ぎながら中性浮力がとれるようになったら今度はその場に止まったまま中性浮力を保ってみましょう。どんな姿勢でも構いません。自分がじっとしていられる姿勢で練習します。
《練習方法4》- ダイビングしていた水深で一旦泳ぐのをやめます。
- 足や手を動かさずその水深を保てるように学んだ浮力調節法(呼吸・BC)をやってみる。
基本的には大まかな調節はBCでして、細かい調節を呼吸でするというイメージです。
ある程度水中での体の動かし方がわかって来ているので最初の頃より調節法の効果が体感できるようになってきているはずです。
BCの調節、呼吸法に夢中になりすぎず水深を保つことを意識しましょう。水深を保つための目安はダイブコンピューターでも良いですが、最初のうちは周りの壁に目印を決めて目安にする方が簡単です。
このように順を追って練習して行くのが一番の早道です。
残念ながらあっという間に中性浮力が上手になる方法というのはありません。
中性浮力はダイビングの中でも一番急がば回れのスキルです。
まとめ
ダイビング初心者がなかなか体得できないスキル、中性浮力。
知識を知ることも大切ですが、水中での体の動かし方を身に着け水中の感覚に慣れることが上達の一番の近道です。
残念ながらすぐに中性浮力をマスターすることは難しいですが、中性浮力に気をつけながらダイビングの本数を重ねるうちに必ず身についていきます。
最初は頭で考えないと出来ないかも知れませんが慣れて来るうちに自然とできるようになるものです。
中性浮力がとれるようになればサンゴが綺麗なポイントや豪快なドロップオフ、いろんな海に自信を持って潜りに行けるようになります!
楽しいダイビングを!!
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