【ダイビングフロート】2つの使用法とファンダイバー向けのおすすめ構造・お手入れについて

今更聞けない器材のこと
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ダイビングフロートが大切なことは学科で習ったけど

  • 具体的にどう使うかわからない
  • どんなフロートを買ったらいいの?
  • ダイビング後のお手入れってどうするの?

という疑問をお持ちのダイバーたくさんいらっしゃると思います。

私はパラオ・マレーシア・インドネシア数か所でダイビングインストラクターをしてきました。
ダイビングフロートは安全なダイビングのためにとても大切なもので使いやすいフロートというのは必要不可欠だと感じました。

この記事では海外ダイブで必須なダイビングフロートの使用法・お手入れ法・おすすめについて解説しようと思います。

ダイビングフロートの2つの使用法

ダイビングフロートには2つの使用法があります。

1水面でフロートを上げるシグナルフロート
2水中からフロートを上げる安全停止フロート
  1. ロストしてしまった時に水面でシグナルフロートとして立てる方法
  2. エキジットポイントに船の出入りが多い時などに水中から安全停止フロートとして自分の居場所を知らせるために打ち上げる方法

万が一の漂流の時などに必要なのはシグナルフロートです。
ファンダイバーは水面でのシグナルフロートを立てる方法を必ず覚えておきましょう。

安全停止フロートはチームの代表(ガイドやインストラクター)が打ち上げるのが普通
ファンダイバーが上げる方法を知っておくのも大切ですが、実際にはファンダイブで打ち上げるチャンスはほとんどありません。

水面でシグナルフロートとして立てる方法【重要】

水面のダイバーはボートの上からとても見えにくいです。
ロストしてしまった場合やボートなどが遠くにいて気づいてもらえない場合はフロートを立てましょう。ダイバーの人数分立てればその分発見されやすくなります。

  1. フロートを用意し空気入れ口にオクトパスのマウスピース部分を入れます。
    しっかり水中に沈めたままシグナルフロートが上、オクトパスが下になるようにしてパージボタンを押します。
    フロートにオクトパスを使って空気を置入れる方法のイラスト
  2. 空気入れ口&オクトパスを水中に入れたままフロートが立つまでパージボタンを押し空気を入れ続けます。
    水面でオクトパスを使ってフロートに空気を入れる方法のイラスト
  3. 空気がたくさん入っても空気入れ口は水中に入れたままにします。
    *空気入れ口を水中に深く入れるようにするとフロートはピンと立ちます。
    水面でシグナルフロートをピンと立たせる方法のイラスト

水中で安全停止フロートとして打ち上げる方法

船の出入りが多い場所でのエキジットはボートからダイバーが見えていないこともありとても危険です。その場合、安全停止(水深5m)の時からフロートを打ち上げてボートに居場所を知らせます。

  1. 安全停止深度に来たらフロートを出します。
    *フロートにロープが絡まないように確認しある程度ロープを伸ばしましょう。
    水中でオクトパスを使ってフロートに空気を入れる方法のイラスト
  2. フロートの空気入れ口を逆さにして下からからオクトパスで空気を入れます。
    水中で入れた空気は水面に行くほど膨らみますのでフロートに3分の1程度空気を入れたらすぐに手を放します。
    空気を入れる時は息を吐きながら自分をマイナス浮力にします。
    また、足首を曲げフィンを水平にすると浮き上がりにくくなります。
    水中でフロートに空気を入れる時の注意のイラスト
    *手を離すのが遅れると一緒に浮かび上がってしまうので注意
    *ロープが絡まってしまうとフロートに引っ張られて急浮上になるので注意
    *もし空気の量が多すぎても下から勝手に出るのでフロートが破裂することはありません

  3. フロートが水面に上がったらロープを下に引くようにするとフロートが綺麗に立ち上がります。
    安全停止フロートをピンと立てるコツのイラスト

水中からフロートを上げるには

  • しっかり中性浮力がとれていること
  • 手を離すタイミングを間違えないこと
  • ロープが絡まずに伸ばせること


などのコツが必要です。
もし失敗すると減圧症などを引き起こすきっかけとなりますので注意が必要です。

応用:水面待機(漂流)の時間が長くなりそうな場合

シグナルフロート、安全停止フロートともに立ててみたけどボートが近くに見えず少し待ちそうだと思った場合空気を入れたまま保持しなければなりません。
フロートの形態にも寄りますが保持方法をいくつかご紹介します。

  • 空気入れ口を沈めフロートを立て続ける方法
    ほとんどのフロートの空気入れ口は両側からフックやロープが出ています。
    そのロープを太ももに止めるようにすると腕の力を使わず楽にフロートを立て続けることが出来ます。
    水面でシグナルフロートをキープして立たせる方法のイラスト
  • 空気入れ口を閉じる方法
    空気入れ口をクルクルと巻いたり折ってロープで結んだりして空気が出ないようにします。
    こうすれば浮き輪代わりにもなりますが、ボートからは見えにくくなるのでできるだけ立てておきましょう。
  • クローズエンドタイプや二重構造のフロートを持参しておく(次の項目で説明)
    中圧ホースや口で空気を入れられるものがあるのでそのタイプのフロートを選んでおけば漂流時に役立ちます。

水面待機が長くなりそうなときに役に立つものとして他に鏡・笛・ホーンなどもあります。

私はフロートとホーン(ブザーではなくホーン)は必ず装備していました。
鏡は毎日ダイビングに持って行くと表面が濁って反射が少なくなり使い物にならなくなりましたが
ファンダイビングくらいの頻度であれば鏡もかなり有効な安全器具ですのでおすすめです。

フロートを購入するときに知っておくべき種類と基本的な特徴

ダイビングのフロートは使用方法で分けると2種類あることはご理解いただけたと思います。
海外ではその形状からどちらもソーセージと呼んでいます。

  • シグナルフロート
  • 安全停止フロート

それぞれのフロートでの必要な特徴を理解しておきましょう。
シグナルフロート・安全停止フロート役割は違いますが同じ構造で両方に使えるものがあるのでそれを購入するのがおすすめです。

それぞれ解説します。

シグナルフロートに必要な構造と特徴

シグナルフロートとは水面で立てるフロート
漂流などをした時にボートから見つけやすくしてもらうためのものです。

シグナルフロートの種類は3つあります。

  • フロートの片側に空気の入り口が大きく開いているオープンエンドタイプ
    オープンエンドのフロートイラスト
  • 小さな空気吹きこみ口しかなく空気が漏れにくいクローズエンドタイプ
    クローズエンドのダイビングフロートのイラスト
  • オープンエンド+クローズエンドの二重構造で両方使える万能タイプ
    多機能なダイビングフロートのイラスト

それぞれの特徴を表にまとめると

オープンエンドタイプクローズエンドタイプ万能タイプ
シグナルフロートとして使える
安全停止フロートとして使える
オクトパスで空気を入れられる
中圧ホースまたは
口で入れる空気吹き込み口あり
破裂防止バルブあり✖ 必要なし
嵩張らず小さくなる
見た目格好いい
ダイビングフロートの種類と特徴

「中圧ホースまたは口で入れる吹き込み口について」
中圧ホースの余分がないとBCのパワーインフレーターから外して使う、または口で吹き込むことになりますので少し面倒です。
しかし、クローズエンドタイプ、万能タイプは風船のように膨らんだままになるので長時間漂流した場合には強いフロートです。漂流のみを考えるとクローズエンドタイプと万能タイプが優秀です。

安全停止フロートに必要な構造と特徴

安全停止の際に水中から打ち上げるのが安全停止フロートです。
通常はガイドやインストラクターが上げるのでファンダイバーが上げる時はほとんどなく緊急時のみとなります。

構造としてはフロートの片側に空気の入り口が大きく開いているオープンエンドタイプ
万能タイプもオープンエンドになっているので安全停止フロートとして使えます。

フロート自体はシンプルで空気吹き入れ口あたりから7~8mのロープを付けて水中から水面のフロートをキープします。
このロープがあるかないかがシグナルフロートと安全フロートとの違いです。

*クローズエンドタイプは安全停止フロートとしては使用できません。

フロートの素材と特徴

シグナルフロートも安全停止フロートも下記の2つの素材のどちらかで出来ています

  • ビニール素材
  • ナイロン素材

どちらも良いところ、悪いところがあります。
ビニール素材の方が素材自体は弱いですが色があせにくく水はけが良いのでお手入れなどが簡単です。
ナイロン素材は見た目も良いしいろいろな機能がついていますが色があせやすく水はけが悪いので後始末が大変です。
このようなことからお仕事で毎日使う場合はナイロン素材もありですがファンダイバーにはビニール素材がおすすめです。

ビニール素材の長所と短所

ビニール素材のシグナルフロートの写真
安っぽく見えるビニール素材も実は長所がいっぱいです。

元々フロートと言えばビニール素材がほとんどでした。
私も長い間ビニール素材のフロートを使用していました。

ビニール素材の長所

  • 色があせづらい
  • 水はけがよく速乾性がある。
  • カビが生えにくい(全然生えないわけではない)
  • シンプルな構造でたたみやすくBCポケットに入る
  • ダイビング後の手入れが簡単

ビニール素材の短所

  • ビニールなので長期間経つと劣化し脇のつなぎ目にひびが入って穴が開く
  • 時々穴が開いてないか点検が必要(目視点検可能)

ナイロン素材の長所と短所

ナイロン素材のシグナルフロート
ナイロン素材は見た目も格好良く長持ちしますが・・・・

ここ数年多くなってきたナイロン素材のフロート
うちのスタッフ達も使っています。

ナイロン素材の長所

  • 生地が強いのと縁取りがついているので長持ちする
  • バルブや空気吹きこみ口などの構造がついていて機能としては万能なものがある
  • 見た目かっこいい

ナイロン素材の短所

  • 生地の水はけが悪く乾かすのが難しい
  • 二重構造のものはほぼ乾かない
  • カビが生えやすい
  • 構造が複雑でBCのポケットに入りづらい
  • 日に当たると色があせる
  • 穴が開いた時の点検が目視では難しい
  • ダイビング後の手入れが面倒

プロのガイドがファンダイバーにおすすめするダイビングフロート

プロのダイブガイドだった私がファンダイバーの友達にすすめるならこんなフロートにします。
理由も解説しますので参考にしていろいろ検討してみて下さい。

元へなちょこ<br>ダイバー
元へなちょこ
ダイバー

ファンダイバーへのおすすめポイント

  1. 安全停止フロート・シグナルフロートと両方に使えるオープンエンドタイプ
  2. 長さは1.2m以上
  3. シンプルな構造
  4. ビニール素材でケース付き
  5. 安全停止フロートとして使う時もロープだけで十分
  1. オープンエンドタイのもの
    シグナルフロート・安全停止フロート両方に使用することが可能で手入れも簡単です。
    クローズエンドのものは一度水が中に入ると出づらく乾きません。
  2. 長さは1.2m以上
    普通のダイビングポイントでは1.2mあれば大丈夫です。
    自分自身が波が高い所やドリフトのポイントを好むので漂流する可能性が大きいと考える方は大きく長いものを選ぶと良いと思います。
  3. シンプルな構造である事
    シンプルであれば小さくなるので持ち運びがしやすくお手入れもしやすい。
    バルブや空気吹き入れ口とかいろいろついていると格好いい感じがしますが
    旅行で使うことを考えると小さくなってお手入が簡単なものが扱いやすいです。
  4. ビニール素材でケースがついているもの
    フロートは色が命。ビニール素材は安っぽく見えますが、色あせがほぼありません。
    また、布で拭きとればすぐに乾かすことも出来るので手入れが簡単です。

    ビニール素材の場合フロートが壊れる(=穴が開く)のは脇の縁部分がBCなどで擦れてひびが入ることが原因なのでBCのポケットに入れても縁が擦れないようにケースがついているものをおすすめします。(ひびが入った場合は目視で確認可能)
    もし、ケースがないようでしたらケースの代わりになるような袋を用意すればOKです。
  5. 安全停止フロートにする場合はロープをつければOK
    安全停止フロートとしても使いたい場合、細い紐だと絡む恐れがあるし、何かの拍子で切れる事もあるので中太ロープ(3~5㎜程度)を7~8m用意しフロートに結び付けましょう。
    スプール(釣りのリールのようなもの)も良いですがファンダイバーの場合、安全フロートとして使うことはほぼないですしリールに巻いた長いロープの手入れも面倒です。
    私を含めてプロのガイドでもロープだけという方は結構います。
    (実はその方が丈夫で長持ちします。)
    ほとんど使わないものをわざわざ買いそろえることはないと思うので私はおすすめしません。
元へなちょこ<br>ダイバー
元へなちょこ
ダイバー

お手入れや持ち運びなんかよりもとにかく安全重視という方、機能性重視という方は
ナイロン素材のオープンエンドタイプ+二重構造の万能タイプ型がおすすめです。
その場合もナイロン生地は日光による色あせがあるのでケースに入れるかBCのポケット入れることをおすすめします。

安全停止フロートのロープの結び方、まとめ方

オープンエンドのフロートを購入したら安全停止フロートに使えるようにロープを結びます。

  1. フロート側はもやい結びをします。
  2. 反対側にはウェイトを付ける方も多いですが私の場合はカラビナを結び付けていました。
    結び方はやはりもやい結びが良いでしょう。
  3. 出来上がったらロープをきれいにまとめます。
    • 一般的には鎖結びにして短くしたものをフロートに巻き付ける方法がポピュラーです。フロートのまとめ方イラスト
    • 私はカレントフックと同じまとめ方をしていました。
      フロートまとめ方イラスト

詳しくは以下の記事でで詳しく説明しています。

ダイビング向け!ほどけない絡まないロープの結び方・まとめ方 | へなちょこダイバー南国を潜る (mydivehistory.com)

ダイビングフロートのお手入れ方法

ダイビングフロートは持っているけどBCのポケットに入れっぱなし
なんていう方結構多いかもしれません。
しかし、その他の器材と同じく真水で洗って乾かすことが大切です。

フロートの材質は2種類。ビニール素材のもの、ナイロン素材のものがありますが
特にナイロン素材のものは乾きが遅いのでカビが生えやすいです。
必ずしっかり乾かしましょう。

カビが生えてしまったナイロン製フロート
手入れを怠ってカビが生えてしまったナイロン製フロート

ビニール素材の方が早く乾きやすく手入れは簡単です。
乾いた布やセームタオルで拭くだけでもかなり水気がとれるのですぐに梱包をしないといけない場合などとても便利です。

*ビニール素材はすぐに乾くからと濡れたまま放置しておくと、最初はヌルヌル感が出るだけですがそのまま長期間放置すると黒いカビが生えてフロートの色自体が黒く変わってしまいますので注意。

ロープも濡れたままだとカビが生え黒くなります。
ほどいて乾かすのをおすすめします。

【洗い方と乾かし方と注意点

フロートの外側の部分はもちろん、中にも真水を入れて洗います。
乾かすときにはまずは逆さにして干します。できたら空気を入れ膨らませたまま干せると理想です。
空気をいっぱい入れるのは難しいので入り口をなるべく開くようにし、逆さにしてできるだけ長時間干しましょう。
ロープはほどいて真水で洗った後、絡まないように気をつけながら乾かしましょう。

ビニール素材のフロートの場合
脇の部分にひびが入って穴が開くことが多いので久しぶりに使う場合はひびや穴が開いていないか目視で調べることをおすすめします。(ナイロン素材は目視での点検は不可能)

まとめ

ダイビングで必要なフロートにはシグナルフロートと安全停止フロートがあります。
ファンダイバーに特に必要なのはシグナルフロートですがロープをつければ安全停止フロートと同じように使えます。

シグナルフロート(水面)は必ず立てられるように練習をしましょう。

安全停止フロートとして水中からあげるのはコツがいります。
必要に応じてインストラクターと一緒に練習するのが良いです。

使わないことに越したことないフロートですが常備し使用法を知っていればもしもの時に安心です。

お手入れ法などを考慮しつつ自分の用途に合ったフロートを購入しましょう。

楽しいダイビングを!

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