【予測可能】ダウンカレント・アップカレントのしくみと回避法、対処法

ダウンカレントの中のダイバーの写真 安全ダイブのための知識
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ダイビングの本数が増えスキルがアップしてくると

大きな魚が見たい・・・
向こう側が見えなくなるくらいの魚の群れを見てみたい・・・

と考え始める方はとても多いと思います。
そうなると魚が多いと言われている流れがあるポイントに挑戦することになります。

ダイビングポイントの流れは横方向に流れるだけの優しい流れが多いですが
中には水深を大きく変える危険な流れ(ダウンカレント・アップカレント)もあります。

私は海外で大物ドリフトダイブのガイドを10年以上していたことがあります。
その時の経験を元にこの記事ではダウンカレント・アップカレントの仕組みや予測することで回避する方法、対処法について解説します。

大物ダイブ・ドリフトダイブをしてみたいという方には一読してほしい記事です。

ダウンカレント・アップカレントとは

浅い所から海底方向に向かって流れる下降流のことをダウンカレントと言います。
反対に海底から水面方向に向かって流れる上昇流のことをアップカレントと言います。

ダイビングポイントでは地形や潮汐の関係で流れを予測できる場合が多い。
そのためその海を熟知しているガイドと潜ることをおすすめします。
また、沖合ではダウンカレント・アップカレントは発生しずらいと思われがちですが冷水隗がやってきたり海流がぶつかったりすると発生する場合もあります。
ファンダイバーはダイビングポイント以外を潜る機会はあまり無いと思いますが知識として知っておいてください。

ダウンカレント・アップカレントが発生する仕組み

アップカレントとダウンカレントがどこで発生するかを説明するイラスト

ダイビングポイントで発生するダウンカレント・アップカレントは海底に突き出した大きな根が関係することがほとんどです。
ダウンカレントやアップカレントが発生する仕組みを理解しておけば予想が出来たり心の準備もしやすくなります。

流れが壁に当たるとアップカレントが発生します

アップカレント説明のイラスト

強い流れが大きな根にぶつかると行き場を無くし上に向かって流れる。
これをアップカレントと言います。

図を見るとわかると思いますが根の近くや浅場の棚へ上がる直前が一番強く流れます。
局所的に強く流れるのでBC/フィンキックなどでは対処できないこともあり特に注意が必要。
棚の水深が深い場合、棚の内側に入ることでアップカレントは無くなります。
しかし、浅い場合はそのまま水面近くまで流されることになります。

浅場の流れから急に深くなるとダウンカレントが発生します

ダウンカレント説明のためのイラスト

棚の上の流れがドロップオフに差し掛かるとドロップオフに沿いながら広がるようにして下方向へ流れる。これがダウンカレントです。
アップカレントほど局所的ではないことが多いです。

浅場の流れの早さ、壁の角度などによってその強さや方向は変わります。
壁の近くから少し離れたところまで強弱に差はありますがダウンカレントが発生することになります。

また、ダイビング中
自分が棚の上にいれば棚が切れるところでのダウンカレントは簡単に予測できますが
特に気を付けてほしいのは浅場が流れている棚下のドロップオフを通過する場合
上からの流れ(ダウンカレント)がある可能性が考えられるので注意が必要です。

海流や冷水隗がぶつかるとダウンカレント・アップカレントが同時に発生します

正式なダイビングポイントでは稀な現象ですが
冷水隗や海流がぶつかる場合、上下に入り込んで流れるためにダウンカレント・アップカレントが同時に発生する場合があります。

海流がぶつかる場合は特に、流れの加減で渦巻になったり非常に速い流れになったりするので注意が必要です。
例外もありますが通常、こういう場所はダイビングポイントにはなっていませんのでご安心ください。

ダウンカレントの回避法と対処法

ダイビングポイントで起こるダウンカレントは地形や潮汐流を把握しているガイドであればある程度予想ができます。
もし、ダウンカレントが予想されるポイントをダイビングする場合は以下のことに注意しましょう。

ダウンカレントにつかまる前に回避する方法

まず、一番大切なのは
そこのポイントを熟知しているガイドが泳いでいるコースから絶対に離れないことです。
特にガイドよりも壁に近づかないように、深くならないようについていきましょう。

ブリーフィングで地形についての説明がある場合、ダウンカレントが予想される場所も説明があるはずですのでしっかり聞きましょう。
もし説明がなくても、自分で地形と予測される流れを考慮してある程度ダウンカレントの予想ができるようになれば上級者の仲間入りです。
ダイビング中も下記の方法でダウンカレント発生を見つけたら近寄らないように気を付けましょう。

ダイビング中に自分でダウンカレントを見つけて回避する方法

水中でダウンカレントは遠くからでも見極めることが可能です

魚・排気を見てダウンカレントを見つける方法の説明イラスト
魚は流れに向かって泳ぐ習性があります。
もし、魚が同じ方向に向かって泳いでいるならそれが潮上ということになります。
つまり魚が上に向かって泳いでいたら、その部分にはダウンカレントが発生しているということになります。
そういう場所には近づかないようにするのが無難です。
ガイドの指示で近づくときはそれなりの覚悟と準備をして近づきましょう。

また、自分の排気でもダウンカレントを見極めることが出来ます。
自分の排気がまっすぐ上がらず一旦下がったりした場合もその部分でダウンカレントが起きていることになります。
自分の排気もしっかり観察しましょう。

元へなちょこ<br>ダイバー
元へなちょこ
ダイバー

ダウンカレントを回避するポイント!

  1. ガイドが泳ぐコースから外れないようについていく。
    壁に近寄らない・深くいかない
  2. ブリーフィングをよく聞き流れや地形などを認識しておく。
    浅場から急に地形が切れる場合は特に注意
  3. 魚の動きを見て流れの方向を観察し危険とわかった時点で避けるようにする。
  4. 排気の泡が一旦下がったりするのはダウンカレントが発生しています。そこからは離れるように努力する。

ダウンカレントから抜け出す対処法

ダウンカレントに捕まってしまった場合
とにかくそのまま海底に引き込まれないように浮上することが重要です。

元へなちょこ<br>ダイバー
元へなちょこ
ダイバー

ダウンカレントの対処で特に注意しなければいけないこと
ほとんどのダイバーは初めてダウンカレントにあった時、自分がダウンカレントにあっているとに気が付きません。
いきなり水深が下がると耳に違和感が起るので必死に耳抜きをしているうちに何十メートルも引き込まれてしまう状況になりとても危険です。

ダイビング中急に耳の違和感を感じたらそれはダウンカレントであることが多い。
耳抜きとともにダウンカレントの対処をすぐに始めましょう。

ダウンカレントにも強さがありそれぞれ対処法が変わってきます。

排気の泡が上がるのが少し遅い位のダウンカレントの対処

  1. フィンキックで少しずつ水深をあげる。
  2. 難しいと感じたらBCに空気を入れて調整
  3. 水深を確認しながら浮上
  4. ダウンカレントから抜けたらBCの空気を抜く(空気を入れた場合)
  5. 中性浮力を取り直す

排気の泡が上がって行かない位のダウンカレントの対処

とにかく早めに対応することが重要です。

  1. フィンキックをしつつ同時にBCに空気を入れ水深を上げる。
  2. 水深を確認しながら浮上
    その場合壁から離れるように斜めに浮上すると流れが弱まることがあります。
  3. やむを得ない場合はウェイトを捨てる(非常に稀です)
  4. 水深が上がってきたらBCの空気を抜く準備をする
    (ダウンカレントから抜けた時にBCに空気がたくさん入っていると急浮上し危険です)
  5. ウェイトを捨てた場合は急浮上するので下向きに泳ぐなどして浮上速度を遅くする努力をする。(非常に稀です)
元へなちょこ<br>ダイバー
元へなちょこ
ダイバー

ダウンカレントから抜け出す対処法のポイント!

  1. フィンキックで水深を上げる
  2. 無理ならBCに空気を入れる
  3. やむを得ない場合はウェイトを捨てる(非常に稀)
  4. ダウンカレントが終わると急浮上するのでBCの空気を抜く準備をする

**ダウンカレント後の急浮上は突然で危険なので注意しましょう

ガイド中に実際にあったダウンカレント体験談

パラオのブルーコーナーでの話

その日は初心者ダイバーと中級者ダイバーのミックスチームでダイビング
ブリーフィングで「ダイビングの終わりは必ず棚の上から浮上を始めてくださいとの注意がありました。

私は初心者チームのアシストをしていたので初級者を連れて棚の上から浮上を開始したのですが、中級者2名がそのまま棚に沿って泳いでいました。
そこから少し遅れて浮上を開始したようですが、なぜかすぐにフィンキックを止めて耳抜きをしながら壁に沿って落ちていくのが見えました。

初級者はすでに安全水位に入っていたのでガイドに任せて急いで助けに潜りました。

棚の上は水深14~5mでしたが追いついた時点で水深は38m。
とにかく上に上がらないとと2名のタンクバルブを持ちフィンキックで持ち上げますが本人たちはダウンカレントに捕まっていることに気づいておらず耳抜きをしながら私を振り払おうと必死でした。

ダウンカレントから抜けた後スレートに「ダウンカレントに捕まっていましたよ。水深見て」と書くまで本人たちは気付いていなかったようでした。

実はこのような経験は一度二度ではありません。
これを読んだ方は覚えていてほしいです。
同じ目には遭ってほしくありません。

【教訓】

  • 流れのあるポイントではブリーフィングをしっかり聞き守りましょう。
  • 浅場で流れていて急に深くなるところにはダウンカレントが発生すると心に留めておきましょう。
  • 急に耳に違和感がある場合は水深が変わっている証拠です。
    耳抜きだけではなくフィンキックなどダウンカレントの対処しましょう。

アップカレントの回避法と対処法

ダイビングポイントで遭遇するアップカレントは流れが壁にあたる状況で起こります。
あらかじめ地形と流れを把握していれば予想することは可能。
ダウンカレントよりも強い流れの場合が多い。

アップカレントを回避するための方法

ダウンカレントの時と同じように
ポイントを熟知しているガイドが泳いでいるコースから離れないということが一番です。
特にガイドよりも壁に近づかないように、浅くならないようについていきましょう。

ブリーフィングでアップカレントが予想される場所の説明があるはずです。
アップカレントゾーンに近づいたらガイドと同じかやや深場を泳ぐようにしましょう。
流れが当たっている壁では強弱はありますがほぼアップカレントが発生します。
もし、ガイドからの説明がなくても自分で地形と流れを見てある程度アップカレントの予想ができるようになれば上級者の仲間入りです。
ダイビング中も下記の方法でアップカレントを見つけたら近寄らないように気を付けましょう。

ダイビング中に自分でアップカレントを見つけ回避する方法

水中でアップカレントは遠くからでも見極めることが可能です。

魚を見てアップカレントを見つける方法の説明イラスト
魚は流れに向かって泳ぐ習性があります。
もし、魚が同じ方向に向かって泳ぐならそれが潮上ということになります。
つまり魚が下に向かって泳いでいたら、その部分にはアップカレントが発生しているということになります。
そういう場所には近づかないように
ガイドの指示があった場合のみ十分な心の準備をして近づきましょう。

元へなちょこ<br>ダイバー
元へなちょこ
ダイバー

アップカレントを回避するためのポイント!

  • ガイドが泳ぐコースから外れないようについていきましょう。
    (壁の近くに行かない・浅く泳がない)
  • ブリーフィングをよく聞き流れや地形などを認識しておきましょう。
    特に流れが当たっている壁の浅場は用心が必要
  • 魚の動きを見ていれば流れの方向がわかるのでそこを避けるようにしましょう。

アップカレントから抜け出す対処法

アップカレントは水面方向へ急浮上するとても危険な流れです。
ダウンカレントよりも強い流れがほとんどでフィンキックやBC操作では逆らえないことも多く減圧症の引き金になりとても危険です。


流れが壁に向かいそこからアップになる場合が多いのでアップカレントに遭った場合、その場の岩などにすぐにつかまりましょう。
つかまった場合、自然と海底方向に頭が向き逆さ状態なると思います。

フィンキックやBCの空気を抜くことも大切ですが
いざという時は根につかまることを優先にし、つかむことができてからBCの空気を抜く方が現実的かも知れません。

アップカレントに捕まってしまった時の対処

  1. 岩などにつかまりながら下に戻れるように努力しましょう
    流れはちょうど壁と棚上の境目部分(角のところ)が一番強いので手で岩などにつかまりながら何メートルか水深を下げられればフィンキックで戻れる場合があります。
  2. 下に戻れない場合はつかまりながら浮上速度を考え浅場へ移動します。
    全く前進が不可能だと感じた場合、岩などにつかまりつつ急激に上方向に流されないよう努力します。後ろ向きに上に上がるようなかたちで浅場へ移動します。
    この時振り返りながら移動するとマスクが流れで飛ばされそうになります。飛ばされないないように片手で押さえるなど注意しましょう。
  3. 手の力が足りずつかまっていられない場合はそのままアップカレントに乗って流れる
    減圧症になる危険があるので出来れば避けたいですがやむを得ない場合は仕方がありません。
    棚の上に上がると流れが少しおさまるので棚の上に出てから態勢を整えます。
  4. その後は次の選択肢があります。
    ブリーフィングなどで打ち合わせしておくと良いでしょう。

    1. 水面近くを沖に出てから潜行すると元の場所に戻れる場合があります。(上級者向け)
    2. 棚から戻れない場合は棚の上から他のダイバーを見てついていく(中上級者向け)
    3. ロストと同じ対応でガイドやバディが来てくれればそのまま浅場でダイビング続行
      会えない場合は浮上しフロートを立てボートにピックアップしてもらいます。
元へなちょこ<br>ダイバー
元へなちょこ
ダイバー

アップカレントから抜け出す対処法ポイント!

  1. とにかく近くの岩などをつかむことが一番
    (BC操作よりもつかむことが優先、つかんだ後BCの空気を抜く)
  2. つかまりながら下に戻れるように努力する
  3. 下に戻れない時はつかまりながら浅場へ移動
  4. つかまっていられない時は棚の上まで流されてから態勢を整える


**とにかく急浮上を避けることが最優先です。
**アップカレントにつかまると対処が難しいので回避するのが一番!

アップカレント体験談

ガイド仲間と新しいダイブポイントをリサーチ中
水深10mの砂地が広がるところで強い流れになりました。最初は踏ん張っていましたがこれはもう無理ということで皆で流れることにしました。

初めてのポイントでどんな地形かわからないので用心はしていたのですが、流れの先に5m位の高さで幅の広い根が見えました。
やばい!と思い、砂地でストップをかけようとしたのですが
強い流れで止まれず
根の脇にへよけることも出来ず
あっという間にその根の真下まで来てしまいました。

つかめる岩をすべてつかむ努力をしましたがすべて転がってしまい、やっとのことで壁の中程で壁をつかんで止まったのですが逆さ鯉のぼり状態。
しばらく我慢しましたが手を持ち替えることもできず、手がちぎれそうで我慢できず手が離れ、一気にほぼ水面付近まで体が浮き上がりました。
その後棚の上(5m)に戻り長めにセーフティストップをして皆で浮上しました。

人間は流れには逆らえないと改めて感じた経験でした。

もちろんこのようなポイントは危険という判断で
ダイビングポイントにはなりませんでしたのでご安心ください。

まとめ

危険な流れと言われているダウンカレントやアップカレントですが
どこでも突然に発生するものではなく地形や流れの方向などで予測することが可能です。

現地ガイドはそう言ったことに熟知していて安全なコースをガイドしています。
皆さんは危険な流れに巻き込まれないためにも必ずガイドのコースから離れないようにして下さい。

大物ドリフトダイブをするならば地形と流れの仕組みなどを自分でも理解し、ある程度流れの予想ができるようになりましょう。それができるようになれば上級者の仲間入りです。

回避法・対処法は必ず理解してから大物ドリフトダイブを楽しんで下さい。

危険を知ってこそ安全なダイビングができます。


楽しいダイビングを!!

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