ダイビングの潜行時に必ず必要な耳抜き
陸上では意識しないことなので疑問が沢山あると思います。
- 耳抜きって何?なぜしなければならないの?
- 耳抜きってどうやってやるの?何回ぐらいやるの?
- 耳抜きのコツを教えて!
- 耳抜きが出来ない原因って何?
この記事では耳抜きに対する疑問に答えつつ
耳抜きのコツやできなかった時の対処法を説明します。
耳抜きが簡単にできるようになると潜行のストレスが減って初心者ダイバー卒業に近づきますよ。
実はあなたも知らぬ間に耳抜きは陸上で経験済み
耳抜きってダイビングだけのものと思っている方が多いと思いますが、実はほとんどの方は陸上で似たような経験をしています。
高い山に登っていく途中や飛行機の離陸・着陸などで耳の奥が押されるような違和感を感じ、唾を飲み込んだり顎を動かしたりしたことがありますよね。
あれは耳の奥と周りとの圧力差を無意識に調整する行動です。
ダイビングで潜行し始めるとそれと同じような違和感が耳に起こります。
その違和感を解消するために意識的にする行動をダイビングでは耳抜きと言います。
耳抜きはなぜしなければいけないのか?その理由としくみ
ダイビングをして潜っていくと水深が深くなればなるほど体内にある空洞内の空気は縮みます。
耳の中の鼓膜の奥にある中耳も空気が入っている組織、潜るごとに空気が縮んでいくので周りの組織を引っ張るようになります。そうするとまるでキスマークと同じ原理で組織を充血させたり最悪は薄い鼓膜を破ったりし、強い痛みやめまいを感じることになり危険です。
この状態を回避する方法はひとつ
鼻の奥につながっている耳管から空気を中耳に送ること(耳抜き)です。
耳管は通常閉じていますが唾をのんだり顎を動かすことで耳管に隙間が空き空気が通るしくみ。
良いタイミングで中耳に空気を送ることで耳が痛くならずに潜行をすることが出危険です
いろいろな耳抜きの方法と痛くならない失敗しないコツ
耳抜きにはいろいろな方法があります。
- 初心者向け:バルサルバ法
- 理想の耳抜き:フレンツェル法
- 唾を飲むだけ:トゥインビー法
- 勝手に抜ける:オートマチック
どのやり方も潜行を始めてすぐに耳抜きをはじめ、違和感を感じたら何回でも行ってください。
浅場の方が圧力変化が大きいですから深い時よりもたくさんの耳抜きが必要になります。
目安としては潜行直後1回、その後水深5mまで3~4回は必要です。
(それ以上必要と言う方もいます)
講習でも習う一般的な耳抜き:バルサルバ法
簡単に言うと鼻をつまんでいきむ方法です。
講習で教えてもらう方法で練習することで確実に出来るようになる方法と言われています。
やり方
- しっかり鼻をつまみます。
- 口から息を吸います。
- 口から空気が出ないように舌を上あごに付けます。
注)耳管の入り口は鼻と口の奥にあるので喉奥に力を入れてしまうと耳管が開きにくくなります。 - 口の奥の空間にゆっくり空気を送り込む感じで耳管に空気を送り込みます。
- 耳の奥でポコンと音がしたりスカッとする感じがしたら耳抜きが出来たことになります。
ダイバー
バルサルバ法は一番簡単な方法と言われていますが
空気を勢いよく送り込みすぎると鼓膜を傷める原因になります。
必ずゆっくりと空気を送り込むことを意識しましょう
耳に負担がかからない理想的な耳抜き:フレンツェル法
鼻をつまんで顎を動かすなどして喉と鼻の間の裏側付近(耳管の入り口付近)を動かし耳抜きする方法です。
耳に負担をかけることなく耳抜きが出来るので理想的な耳抜きと言えます。
やり方
- 鼻をしっかりつまみます。
- 口から息を吸った後、舌や喉に力を入れないように口の奥に空間を作ります。
- 顎を動かしたり舌で口の奥の空気を押しつぶす感じに動かしに耳管に空気を送り込みます。
- 耳の奥の違和感がとれたら耳抜きが出来た証拠です。
ダイバー
ダイバーの皆さんはこのフレンツェル法を是非マスターして下さい。
やり方の3のところが難しく感じるかもしれませんが
先の図の耳管の入り口付近を横に伸ばすように意識して舌を盛り上げ空気を押し込む感じにすると意外と簡単にできるはずです。
唾をのむ方法:トゥインビー法
鼻をつまんで唾液を飲み込む方法です。
飛行機や高い山に登るときなどによく使われている方法だと思います。
やり方
- 鼻をつまみます
- 唾液を飲み込みます。
- 耳の違和感が取れたら耳が抜けた証拠です。
ダイバー
トゥインビー法は理論的に考えると陸でつばを飲み込んで出来る人は出来るという事になりそうですが
実際はタンクの空気で喉が渇いていたり、レギュをくわえて口が開いていたり・・・
陸上でやってみるよりもダビング時は難易度がかなり上がります。
耳抜きが意識しなくても出来る:オートマチック
何もしないでも耳抜きが出来てしまっているラッキーな方が一定の割合います。
その方たちはオートマチックに耳抜きが出来ています。
【実際に出会った講習生の話】
耳抜きが出来ないと言って潜れない講習生がいました。
「ポコって鳴ったりしたりスカッとしたら大丈夫」と聞いたけどそんな感じが全くないと訴えます。
そして耳抜きが出来ないから潜れないと水面から潜ろうとしません。
もしかして??と思うところがあったので水面を泳ぐ格好でお魚を見せながらBCの空気を抜き、少しずつ潜行させるとその方は耳の違和感を訴えることなく3m潜れニコニコしていました。
耳大丈夫?のサインをすると耳抜きが出来ないというサインが返ってきましたが3mも潜って違和感がなかったということはオートマチックに耳抜きが出来ていたということ
エキジット後にオートマチックに耳抜きが出来ているということをお知らせしました。
耳管は人それぞれです。違和感痛みをほぼ感じないという方はラッキーです。
耳抜きをうまくするためのコツと気を付けること
スムーズに耳抜きをするにはいくつかのコツがあります。
- ダイビング前のコツ
- ダイビング中のコツ
- 練習のする場合のコツ
それぞれ説明します。
耳抜きのためにダイビング前に気を付けるコツ
- 前日は睡眠不足にならないように
- 前日は飲み過ぎないように
- なるべく肩こりなどはほぐしたりストレッチをしておく
- 顎の筋肉を動かしておく(ガムを噛むなど)
- 風邪をひかない
1,2 寝不足や飲み過ぎはむくみの原因。
耳管の周りがむくむと空気の通りが悪くなり耳抜きが難しくなることがります。
しっかり睡眠をとり、アルコールも控えましょう。
3,4 肩回り顎周りの循環を良くしむくみ解消をするとよい。
普段からストレッチなどで体をほぐしておくのも効果的
ガムなどを噛んで顎を積極的に動かすのもとても良いです。
5 風邪はダイビングの大敵
風邪をひいて鼻づまりや喉が腫れている状況では耳管も腫れていて耳抜きはとても難しいです。
風邪をひいたときは潔くダイビングをキャンセルする勇気を持ちましょう。
体調を万全にしてダイビングに臨みましょう!
ダイビング中の耳抜きのコツ
- 潜行前に水面で耳抜きをする
- 早めにこまめに耳抜きをする
- 口から空気が漏れないようにする
- 首、顎の力を抜く
- 耳抜きは水面から始めるとうまくいく
水面で一度耳管を開いておくとその後もスムーズに耳抜きが出来ます。 - 耳管がふさがらないうちに早めにこまめに耳抜きをする
水圧がかかり中耳側の空気が縮むと耳管が吸いつく感じでピタッと閉じてしまいます。
そうなるといくら耳抜きても耳管が開きにくくなり耳抜きに失敗します。
早めにこまめに耳抜きをしましょう。 - レギュをくわえて口が開いていると口から空気が漏れることがあります。
しっかり耳管に空気が送れるように口から空気が漏れないように気を付けましょう。 - 首や顎を柔軟にリラックスしましょう。
首、顎に力が入ると耳管が開きにくくなります。
ちょっと耳が痛いだけだからと無理に潜ってしまう方がいます。
そのダイビング中はとりあえず潜れますが、エキジットした後耳管が痛み腫れてしまいます。その結果しばらく全くダイビングが出来なくなる恐れがあります。
絶対に無理をせずに耳抜きをクリアしてから潜行しましょう。
実践に使える耳抜き練習法とコツをアドバイス
海に行く前に練習しておきたい場合もむやみに練習しては実践に使えません。
意識して練習した方が良いことをアドバイスします。
- 口を閉じたままではなくレギュレーターをくわえるイメージで口は少し開けて練習します。
口を閉じたまま耳抜きが出来ても、本番はレギュレーターをくわえているので口から空気が漏れてしまっているという方がとても多いです。
練習の時は少し口(上歯と下歯の間)を開けておくかスノーケルをくわえて舌先を歯の付け根に押し付けるようにして口から息が漏れないように練習することをお勧めします。 - 耳管の入り口を緩めて耳抜きをする練習
耳管の入り口はイメージ的にはのどちんこの裏にあると思ってください。- まずは顎と舌の筋肉をリラックスし口の奥に空間を作りましょう。
- 舌先を歯の付け根に押し当てて口から空気が漏れないようにします。
- 鼻をつまみます。
- 舌の奥を少し盛り上げ同時進行で口角を上げるようにすると耳管付近が緩みます。
(この時点ですでに耳抜きが完了出来れば優秀:理想の耳抜きフレンツェル法) - いきむように空気を送り込めば耳抜きが出来ます。
耳抜きが出来ない原因:よくある原因6つ
よくある原因はこんな感じです。
- 口から空気が出てしまっている
- 耳抜きをするタイミングが遅い
- 緊張して顎周辺の筋肉がこわばっている
- 鼻をつまめていない
- 風邪気味
- 生まれつき耳管が細い
それぞれ対処法を説明します。
耳抜きが出来ないダイバーのよくある原因とその対処法
- 耳管に空気を送っているつもりが口から空気が出てしまっている
スノーケルをくわえて練習するなど口を開けたまま耳抜きをする練習をしましょう。 - 耳が痛くなってから耳抜きをする→タイミングが遅い
水圧がかかってくると中耳の空気が縮み真空状態に近づきます。そうなると耳管がピタッと閉じてしまい開かなくなります。そうなる前に耳抜きをすることが大事です。
その場合少し水深を上げてからやり直すと耳抜きがしやすくなります。 - 緊張して顎周辺の筋肉がこわばっている
レギュレーターなどをくわえているせいもあり顎に力が入りやすくなっています。
嚙む力より唇を閉じる力を意識して喉の方には力が入らないようにしてみましょう。 - 鼻をつまめていない
マスクが顔に合っていなくて鼻が十分につまめていない方がたまにいます。しっかり鼻をつまめるマスクを選びましょう。 - 風邪気味
風邪を引いていなくても鼻水が出ていたり炎症が起きている場合、耳管が腫れていることがあり耳抜きがとてもしずらくなります。体調の良くない時はダイビングをあきらめる勇気も必要です。 - 生まれつき耳管が細い
元々生まれつき耳管が細かったり曲がっていたりして耳抜きをしにくい体質の方がいます。
使わない器官は退化してくるものなので現代人には結構多いそうです。
もしかしてと思う方は耳鼻科の病院で診てもらうことをお勧めします。
実は私も耳管が細い方で「ダイビングに適していない」と警告されましたが何度も潜るうちに普通に耳抜きが出来るようになりました。
あきらめる必要はありません。
耳抜きができない時の対処法を覚えておきましょう
一般的な対処としては・・・
- 首や顎を動かしたりマッサージをして耳管を開く努力をします。
- 慣れたダイバーならレギュレーターを口から外して大きく口を開けたり閉じたり顎を動かして運動をするのもおすすめです。
もし耳抜きに自信がないのであればダイビングのスタッフに前もって耳抜きがしにくいことを言っておくのがおすすめです。そうすることでエントリーに時間がかけられるポイント、浅場を付いてこられるポイントなどを采配してもらえることがあります。
ここからは場面別の対処方法を説明します。
潜行したとたんに耳抜きが出来ない場合
一度水面に戻りましょう。
浮上してBCに空気を入れて態勢を確保。
レギュレーターを外し、顎と首の運動した後水面で耳抜きを何度かやってみる。
出来るようだったらレギュをくわえてからもう一回リハーサル。
その後、落ち着いて潜行し直します。
水面で出来ないものは水中では出来ません。
何度かは耳抜きできたのに途中から抜けなくなった場合
少しだけ水深を上げましょう。
フィンキックを使って少しだけ水深を上げましょう。
前に耳抜きした水深くらいまで戻ります。中耳に送り込んだ空気が膨らんで耳管に空気が戻ってくれば耳抜きがしやすくなります。
一番おすすめできないのは水面まで上がってしまう事。
それまで耳が抜けて潜れた分も全部帳消しになってしまいます。
片耳だけしか抜けない場合
少しだけ水深を上げます。
そして出来ない方の耳を上にして首を延ばします。
耳管が片耳だけ閉じてしまっている状態なので
そちら側の首を伸ばしたりマッサージして緊張をほぐしながらリラックスすることに努めます。
少し時間をかけながら慣らしていく感じにします。
時間がかかって申し訳ないと思う場合は次の項目を参考にしてください。
耳抜きに時間がかかりそうな場合
時間をかければ耳抜きが出来るというダイバーも多いです。
その場合前もってスタッフに耳抜きがしにくいことを言っておけば、浅場をついていけるポイントを采配してくれている場合があります。
流れがなく透明度が良いポイントであれば他のダイバーの上をついて行きながらゆっくり自分のペースで耳抜きをし潜行しながらファンダイブが出来ます。
インストラクターと一緒でなくても恐怖感がなくて上からついて行けるのであれば「耳抜きに時間がかかるので浅場からついて行きたいです」と前もってスタッフに申し出ると良いでしょう。
まとめ
ダイビングをするには必ず耳抜きが必要になります。
耳抜きのコツはいろいろありますが
- 水面で一度耳抜きをしてから潜行する
- 潜り始め耳に違和感を感じる前に早めにこまめにする
- 口から空気が漏れないようにする。
- 首や肩回りをマッサージしておく(ガムを噛むのも良い)
そして一番大事なのは
耳管の入り口付近のリラックスを意識すること
耳管の入り口は喉の上、のどちんこの裏位にあります。
そこを緊張させないように口の奥に空間を作り舌先を上顎に当てたら鼻をつまみ舌を奥から盛り上げるようにしつつ口角を上げるようなつもり喉付近を動かし空気を送り込みましょう。
最初は難しいと感じている耳抜きも何度もダイビングすることで耳管付近の筋肉が柔軟に動くようになり耳抜きが簡単に出来るようになっていきます。
耳抜きが簡単にできるようになれば潜行時のストレスは半分以下になりもっとダイビングが楽しくなりますよ。
リラックスして楽しいダイビングを!!
コメント