まったりと小さな魚たちを観察・撮影するのが大好きなダイバーは
海外でもやっぱりまったりと潜りたい
日本にいないレアな魚を見てみたい
動かずに写真撮影したい
と考えていらっしゃると思います。
しかし海外でのマクロダイブは日本のスタイルとはちょっと違うところがあります。
私は海外ガイド歴25年。マクロガイドと呼ばれてきました。
今はマクロ派ダイバーご用達のダイビングセンターを経営しています。
その経験から海外でのマクロダイブに行く前に考えるべきこと、できたほうがいいスキル・コツ・ルールなどを解説したいと思います。
海外でのマクロダイブとは
海外にもマクロで有名なスポットがたくさんあります。
それらのスポットは
レアな魚が多いはず!
流れもそれほど強くなく移動が少ないダイビングスタイルのはず
ガイドが魚をよく知っていて教えてくれるもの
と日本人ダイバーには思われがちなのですが
実際はお世話になるサービスによってダイビングスタイルが違いがっかりすることがあります。
特に日本人のマクロダイブのスタイルは海外では特殊とされています。
そのため自分がしたいマクロダイブをするにはそれに似たダイブスタイルのサービスを見つけることが重要になります。
ダイバー
基本的には日本人経営だったり日本人ガイドがいるサービスを選ぶことで希望のダイビングスタイルに近いサービスを見つけることができるはずです。
外国人経営でもダイビング仲間から評判の良いところなら多分大丈夫です。
日本の常識=海外の非常識
- 日本ではガイドが魚をよく知っていて珍しい魚を教えてくれますが、海外のガイドは有名な魚は知っていますがそれ以外の魚の知識がないガイドが多いです。
- 日本ではガイドがゲストの管理をしながら潜りますが、海外ではガイドは道しるべで基本バディ単位で管理という場合が多いです。
- 日本では着底することが当たり前と思っているダイバーが多いですが国際的には着底はすべきでないとされています。もちろん、日本人でも珊瑚の上に着底するダイバーはいないと思いますが、サービスによっては砂地でもNGな場合があります。
- 日本では写真撮影の際に被写体を触ったり動かしたりするのは仕方がないこととする風習が見られます。しかし国際的には魚や生物を触ること、石など環境を触ることもNGです。
日本と全く同じスタイルやルールでという訳にはいきませんが
この記事では日本人のマクロダイブスタイルに適応しそうなサービスを選んだことを前提にしながら解説したいと思います。
マクロダイブを楽しむために必要なスキル
海外ダイブのための基本的スキルがすべてOKであるという前提にここではマクロダイブのスキルに対してのみ解説します。
基本的スキルを確認しておきたいという方はこちらのページをご覧ください。
海外ダイブに行くなら習得しておきたい10のダイビングスキル!【初心者スポット編】
一般的に海外ではマクロダイブと言えど中性浮力がスタンダードなのですが
この記事では暗黙の了解で着底を許している日本人スタイルに似た現地サービスの場合を解説します。
ダイバー
習得しておきたいスキル
- あおり足
- 細やかな中性浮力と水中姿勢
- 砂をまかずに着底
- マナーのある被写体の譲り方
- 魚に近づける呼吸法
- ナイトロックス
- 生物を見つつガイドも見れる視野
- ロストした場合の対処
- BC水面脱着
マクロダイブでは必須の泳ぎ方:あおり足
あおり足はマスターしておきたいフィンキックです。
マクロダイブは小さな魚に近づいて観察するダイビング
しかしダイビング講習で最初に習うアップ&ダウンストロークはフィンが上下に動くのでサンゴを壊してしまったり砂をまいてしまいがちです。
あおり足は水平方向に足が動く泳ぎ方なのでサンゴや砂を蹴ることはなくなります。
ダイバー
あおり足は平泳ぎに似た足の動かし方でゆっくりと足の裏で水を蹴ります。
アップ&ダウンストロークよりも力が要らず慣れるととても楽なフィンキックです。
あおり足の効果的な練習方法はこちらのページを参照してください。
【あおり足でダイビングレベルアップ!】そのしくみと効果的な練習方法
小さな魚の場所に合わせられるような細やかな中性浮力と水中姿勢
中層を泳ぐダイビングなら多少上下する中性浮力でも構いませんが、小さな魚になればなるほど細やかな中性浮力が必要になります。
砂地にいる魚を探す時、上下する中性浮力では魚を探すことはできません。
珊瑚に囲まれた砂地に魚がいたら泳ぎながらではなく肺の空気を調節して近づかなければなりません。
近づいた後も目線を生物に合わせていられる水中姿勢も必要です。
ダイバー
中性浮力と水中姿勢が上手なゲストは連れて行ける環境がひろがり、お見せできる生物も多くなります。
初級者の中性浮力ではなくマクロダイブ用の1ランク上の中性浮力と水中姿勢についてはこちらの記事を参照にして下さい。
海外でマクロダイブを楽しむための中性浮力と水中姿勢
砂をまかずに着底・泳ぎ出すスキル
マクロダイブでは砂地を潜ることがとても多いです。
砂地にいる小さな魚を見るために着底をしますが着底するたびにモクモクと砂を舞い上げられていては観察どころではありません。
とくに泥っぽいポイントの場合、一度巻き上げたらしばらくお魚を拝むこともできなくなります。
泳ぎ出す場合も同じく、自分は観察したけどバディが見る時には砂しか見えなかったなんてことがないようにしましょう。
ダイバー
《砂地に着底・泳ぎ出す方法&コツ》
- 砂地に着底する場合は最初のうちは人差し指やツンツン棒を目的地近くに差すようにしてから肺の調節をしつつゆっくり着底します。
- 砂地から泳ぎ出すときは肺の調節で浮かびつつフィンを上にあげてからゆっくりあおり足で泳ぎ出します。
段階を追ったを練習して上手になりたいという方はこちらのページで詳しく説明しています。
【本格的マクロダイブ向け】砂を巻き上げない着底・離底スキルとその練習方法
生物・被写体の譲り方を知っておきましょう
小さな生物はチーム全員でみれないこともあるので順番に観察します。
そのため大きな魚や地形を見るダイビングとは違い細かなマナーやスキルが必要です。
その時に譲り方を知らずにひっこめてしまったり、フィンで砂をまいて見えなくしてしまったりしないように譲り方を知っておきましょう。
ダイバー
《被写体を譲る方法》
指やツンツン棒を差してから体を浮かせたあと
・指を移動させながら後ろに下がる方法
・浮かんでそこから真横に泳ぎ出す方法
・逆あおり足で後ろに下がる方法
という3つの方法があります。
マクロダイブでのマナーや被写体を譲るスキルを詳しく説明した記事はこちらです。
【マクロダイブのマナー】迷惑をかけない生物・被写体の観察の仕方、譲り方スキル
魚に近づける動作と呼吸法
魚が逃げにくい動作や呼吸法ができるようになればマクロダイブはもっと楽しくなります。
ガイドが魚を見つけた時は出っぱなしだった魚が、ゲストが来たとたんに引っ込んでしまうということが良くあります。
殺気が出ているんだよ~とゲストにごまかすことが多いですが多くは呼吸音とその動作です。
小さな生物は呼吸音(特に排気音)にとても敏感です。
かと言って呼吸をしないわけにはいきません。
海の中で呼吸音をいかに出さないようにするかがマクロダイブでは鍵となります。
また、筋肉をめいっぱい使うような動作やビクッとする動作も魚たちが嫌がるものです。
優雅に動き静かな呼吸を心がけましょう。
ダイバー
《魚に近づける呼吸法》
ズバリ!吐きはじめの空気を少なくします。
最初に大きな泡がボコッと空気を出さないように少しずつ小さな泡を出すようにします。
そうすれば魚もだんだん慣れてきて引っ込まなくなります。
《魚が嫌がらない動作》
ギュッと力を入れたりビクッと早く動く動作が嫌われるのでとにかく優雅にゆっくり動きましょう。
具体的なことはこちらのページにまとめました。参考にしてみて下さい。
【生物に近寄るコツ】魚に嫌われない優雅な動作と呼吸法
ナイトロックスのライセンス
海外でマクロダイブをするのでしたらナイトロックスのライセンスをとっておくことがおすすめです。
マクロダイブは魚の観察時間が長くなりがち
あまり動かないのでエアも減らず、気が付いた時には長いダイビングになっている経験があると思います。
そのようなことから海外でマクロダイブが盛んなサイトでは、ナイトロックスを扱うダイブセンターがほとんどです。
その中で自分だけ空気で潜ると毎回DECOギリギリまたは毎回DECOになってしまうこともあります。
簡単な講習でナイトロックスのライセンスはとれますので是非とっておきましょう。
ダイバー
【より安全に潜るためにナイトロックスを使いましょう】
ダイブコンピュータをナイトロックスに合わせてその表示ギリギリまで潜る=危険ギリギリの窒素が体にしみこんでいるということになります。
しかも、ナイトロックスの場合は長い時間をかけてしみこんでいるので排出が遅くなるのでさらに危険です。
おすすめなのはナイトロックスタンクを使い、普通モードで潜る方法です。
普通モードで潜ればナイトロックスのダイブプロフィールよりも安全です。
もしDECOが出たとしてもDecoストップをして浮上すればより安全なダイブだと言えます。
ナイトロックスをおすすめする理由を詳しく解説した記事はこちら
ナイトロックス(エンリッチドエア)は疲れやすい方、安全に潜りたいダイバーにおすすめ
生物を見つつガイドも見れる視野をもちましょう
小さなお魚を観察しつつもガイドがどちらの方向にいるのか確認しながら潜ることが大切です。
マクロダイブでは小さな魚を観察するのでどうしても視野が狭くなりがち
日本のダイブガイドならばそんなゲストもしっかりフォローしてくれますが、海外ではそうでない場合も多いです。
ガイドは道しるべ、基本バディダイブという考え方が基本だからです。
ダイバー
写真を写す時にもシャッターごとに自分のチームの動きを確認するなど周りの状況を気にしながら潜りましょう。
ブリーフィングで教えられたコースをできるだけ覚えておくことも有効です。
ロストした場合の対処法を覚えておきましょう
ロストした場合の基本の対処法を覚えておく、またはローカルルールを確認しておきましょう。
マクロダイブは普通のダイビングよりも透明度の悪いポイントの場合が多く、ガイドやチームを見失う確率もその分多いです。
最初の講習で学んだ基本のロスト対処法
「1分待って誰も来なければ浮上して水面で待つ」を忘れないようにしましょう。
また、そういったポイントではガイドがゲストを連れまわしにくいために、独特なローカルルールを作っている場合もあります。
「はぐれたらバディダイブ」、「ガイドが戻るまで待っていること」、「撮影し終わったら音を鳴らす」、「コンパスで南の方に向かって浅場で集合」・・・などなど。
ブリーフィングの際に説明があると思うので聞き逃さないようにしましょう。
ダイバー
ブリーフィングでローカルルールの説明がない場合は基本のロスト対処と言うことになります。
基本的なロストの場合の対処法についての詳細はこちらのページで確認してください。
ダイビングでロスト!慌てずに対処できますか?【対処法・心構えと予防法】
BCの水面装着
BCを水面で装着できるようになっていると焦らずに済みます。
マクロダイブもマニア度が高くなるとマグローブやラグーンの中などを潜るようになりますが
干潮の時は水深が浅くバックロールやジャイアントストライドではエントリー出来ない場合があります。
水面でバタバタせずにBCを装着できると良いでしょう。
ダイバー
水面装着する場合はボートなどから空気の入ったBCを受け取り、ある程度空気を抜いてから装着します。
水面での装着方法の詳細はこちらのページで説明しています。
海外ダイビングに行くなら必須!基本のエントリー2種と特殊なエントリー方法
まとめ
海外でのマクロダイブは日本でのマクロダイブとは少し違うルールがあります。
しかし、日本人経営のサービス・日本人ガイドがいるところを選ぶようにすれば日本スタイルに近いマクロダイビングをすることも可能です。
自分のスタイルに合ったダイビングサービスを見つけるためにダイビング仲間からいろいろ情報を集めてみると良いでしょう。
ワイドダイビングよりも細やかなフィンワークや中性浮力、集中力と広い視野など繊細なスキルが必要なマクロダイビング。
多くは日本でのダイビングで練習、習得できるものです。
一緒に潜ってる仲間に迷惑をかけずに潜れるようになったと思ったら
ぜひ、海外のマクロダイブにも挑戦してみて下さい。
楽しいダイビングを!!
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