ナイトロックス(エンリッチ)は日本ではまだ特別なダイビングとされていますが
海外では導入しているダイブセンターも多くスタンダードになりつつあります。
特にマクロのダイブサイトではダイブタイムが長くなったり、一日のダイブ本数が3本以上になるサイトもありナイトロックスでのダイブが盛んです。
私は海外でマクロガイドを25年以上していました。
自分の体のためにもナイトロックスは必要不可欠なもので自分のリゾートでも導入しています。
この記事ではナイトロックスがなぜ必要なのか
ナイトロックスのメリットデメリットを解説しようと思います。
ナイトロックス(エンリッチドエア)とは安全に潜るための混合気体
ナイトロックスの名前の由来は
窒素(Nitrogen)+酸素(Oxygen)=ナイトロックス(Nitrox)
名前の通り窒素と酸素の混合気体という意味です。
その中でも酸素の割合が空気(21%)よりも多いものをエンリッチドエアと言います。
海外ではナイトロックスでもエンリッチでも通じますが
エンリッチドエア(豊かな空気)が正確です。
なぜナイトロックス(エンリッチドエア)は安全なのか
エンリッチドエアは通常の空気よりも酸素濃度が高い=窒素濃度が低いので
ダイビングで一番恐れられている窒素の影響で発症する減圧症を引き起こしにくくなります。
タンク中の窒素濃度が低いことから潜水中は窒素が体に貯まりにくく、安全停止時は窒素を排出する速度が速くなります。
いつものようなダイブプロフィールでも窒素の影響が少なくなるので安全なダイビングとなります。
ダイバー
安全を重視するならダイブコンピュータは空気モードで
最近のダイブコンピュータにはナイトロックスモードがついています。
酸素濃度を設定すれば無減圧時間を大幅に伸ばすことが出来ます。
しかし、その時間いっぱい潜ってしまうと空気の時と同じく危険な量の窒素が体内にたまることに
しかも、時間をかけてより深い組織にたまるので減圧症を発症した場合はもっと重症になる可能性があります。
こんな方はナイトロックス(エンリッチドエア)がおすすめです
ダイバー全員におすすめしたいナイトロックスですが
特にこのような方は強くお勧めします。
体質的におすすめな方
- ダイビングの後にだるくなる。眠たくなる方
- 高齢の方または太っていて代謝が悪い方
- 減圧症の経験がある方
こんなダイビングスタイルの方におすすめ
- 気が付くと長時間潜ってしまっていることが多い方
- 1日に3ダイブ以上潜る方
- 毎日または何日か続けて潜る方
- ダイビングを長く続けたい人
それぞれ説明します。
減圧症になりやすい体質的の方にはナイトロックスがおすすめ
一般的に減圧症になりやすいと言われている体質をお持ちの方にはナイトロックスをおすすめます。
ナイトロックスを使うことで減圧症の可能性が低くなり、安心してダイビングを楽しめるようになります。
ダイビングの後にだるくなる。眠たくなる方
ダイビング後には少なからず窒素の影響を受けていることが考えられます。
普段から疲れ気味やストレスから代謝が落ちていることも拍車をかけてだるくなったり眠くなったりする方が多いです。
ナイトロックスでのダイビングは窒素の影響を受けにくいのと酸素を多く取り入れられることで元気になる方が多く見られます。
初めてのナイトロックス(経験談)
いつもダイビングをした日は気だるい感じで8時を過ぎると眠気がしていました。
ある日のこと
いつものビールの許容量を超えても頭がスッキリして楽しいログ付けタイム、こんな楽しいのは初めてかもとよく考えてみると
その日は友人の勧めでナイトロックスタンクを3Dive体験させてもらっていたのです。
もしかしてダイビングしてない日よりも元気だったかもしれません。
後日すぐにナイトロックスの講習を受けることにしたのは言うまでもありません。
疲れにくい、頭がスッキリするなどは個人差があります。
特に普段から疲れを感じる方だとその変化を感じることが出来るようです。
逆にいつも疲れを感じたことがない方だと変化を感じにくいのが普通です。
高齢の方または太っていて代謝が悪い方
代謝が良くない方は窒素の影響を受けやすいのでナイトロックスを使用するのをおすすめします。
ナイトロックスを使用することで代謝が悪くても深場から浅場に戻れば血液中の窒素を肺から排出しやすくなります。
減圧症の経験がある方
減圧症は一度かかってしまうと繰り返す方がとても多い病気です。
原因ははっきりしませんが一度でもなってしまった場合はかかりやすい体質になってしまったと自覚しておくことが大切です。
ナイトロックスを使うことで減圧症のリスクを抑えつつのダイビング復活をおすすめします。
長く、多く潜るダイビングスタイルにはナイトロックスがおすすめ
気が付くと長時間潜ってしまう、一日潜れるだけ潜りたい、一生潜っていたい・・など
ダイビングに夢中になっているダイバーにはナイトロックスをおすすめします。
気が付くと長時間潜ってしまっていることが多い方
マクロダイブなど小さな生物に向き合っていると時間が経つのがとても早く、気が付いたらDECOギリギリというのはよくあることです。
ナイトロックスであれば同じだけの時間を潜っても体にしみこむ窒素の量は少なくなりますから安全に潜れるということになります。
1日に3ダイブ以上潜る方
海外でのマクロダイビングの場合、基本のダイブ本数が3本というところが結構多いです。
それに加えてセルフダイブもとなると一日に潜る本数は4本~5本になることもあり体にしみこむ窒素量はどんどん多くなります。
ナイトロックスを使うと窒素のしみこみも少なくて済みますし、安全停止時には肺から多くの窒素を排出できるので空気よりもずっと安全に潜れます。
毎日または何日間も潜る方
海外ダイビング旅行では1日でダイビングが終わることはなく何日もダイビングを続けることになります。
前日にのダイビングで体内に残っている窒素を持ち越し翌日もダイビングを繰り返すわけですから体に良い訳はありません。
窒素の影響が少ないナイトロックスを使うことで毎日のダイビングを少しでも安全に潜ることを考えましょう。
ダイビングを長く続けたい方
ダイビングという趣味を末永く続けたい方にはナイトロックスをおすすめします。
医学的根拠はありませんが、1000本以上潜ると何かしら減圧症に似た症状が出やすくなると言われています。
年をとってもダイビングを続けたいという方は今のうちからナイトロックスを使うことでダイビング人生が長くなると考えられます。
ナイトロックス(エンリッチドエア)のメリットとデメリット
ナイトロックスはいいところだらけに見えるかもしれませんがそんなことはありません。
メリットとデメリットをしっかり理解した上で使用することで安全なダイビングを行うことができます。
ナイトロックス(エンリッチドエア)のメリット
窒素量が少なく酸素が多いナイトロックスを使うことで・・・
- 体内の残留窒素が少なくなります。
- →減圧症発症リスクが少なくなる
- →ダイビング後の疲労感、眠気がなくなる
(それまで疲労感などがない人はあまり変わらない)
- 無減圧潜水時間が延びます。
- →空気のダイコン設定で潜ると安全性が増す
ナイトロックス設定でギリギリまで潜ると安全性は同じまたはさらに用心が必要
- →空気のダイコン設定で潜ると安全性が増す
ダイバー
酸素が多いって言うけど活性酸素は大丈夫?
確かに酸素を多く吸うことになるので活性酸素が心配になりますが
ナイトロックスでも普通のダイビングスタイルではジョギングをしたのと同じ位の活性酸素しか発生しないので問題ないと実験でも証明されています。
参照)Dr.山見のダイバーズクリニック
ナイトロックス(エンリッチドエア)のデメリット
窒素は少なくて体に優しいですが、圧力下で酸素を吸うといろいろな問題が起こります。
- ナイトロックスでは深く潜れない。
- 酸素中毒の恐れ*があるので32%のナイトロックスで水深34m、36%では水深29mまでしか潜れません。
- 専用器材が必要な場合がある。
- 日本ではそういう場合もありますが
海外では40%以下のナイトロックスでは専用器材でなくて良いとされている方が多いです。
- 日本ではそういう場合もありますが
- 普通のタンクよりも高価である
- タンク一本につきチャージをするところ、日数や期間によってチャージするところがある
- 海外ではナイトロックス無料というところが多くなってきている。
- ライセンスが必要
- ライセンス団体によるが半日講習やインターネット講習などで簡単に受講できる。
酸素中毒とは・・・・・
一定以上の高分圧酸素を吸うことで突然に意識喪失、痙攣、硬直を繰り返し最悪の場合命を落とすことがあります。
また、酸素中毒を発症するほどの分圧でなくても長時間に渡って高分圧酸素を呼吸すると胸の痛みや呼吸困難を起こすことがあります(慢性の酸素中毒)
日本国内ではまだ供給の少ないナイトロックス(エンリッチドエア)ですが
海外ではスタンダードになりつつありデメリットも少ないです。
海外ダイブに興味のある方はナイトロックスのライセンスを取得しておくことをおすすめします。
まとめ
ナイトロックス(エンリッチドエア)は窒素の分量を減らし酸素分量を増やした混合気体です。
窒素の取り込み・排出が早いことで減圧症の予防に役立ち、酸素量が多いことで疲れにくいのが特徴。
ただ、水深が深すぎると酸素中毒を起こすので注意が必要です。
深場に行かず、長いダイビング、本数を多く潜る方
海外ダイビングを視野に入れている方はライセンスをとっておいて損はありません。
上手にナイトロックスを取り入れて安全なダイビングを楽しみましょう。
楽しいダイビングを!!
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