ダイビングでは海の中に潜るためにウェイトをつけます。
ウェイトは「適正ウェイト」がいいってよく言われるけど具体的にどうしたら良いかよくわからないという方のための記事です。
私は約30年間数多くのゲストをガイドしてきました。
その時にゲストによく聞かれていた質問
- 適正ウェイトって一体なに?
- 適正ウェイトじゃないとどうなるの?
- 目安とか計算方法ってあるの?
- 適正ウェイトの調節の仕方を教えて!
- 自分の適正ウェイトって一度確認したら大丈夫?
ひとつひとつわかりやすくお答えします。
へなちょこダイバーだった私も「浮いちゃうより沈んだ方がいいじゃん?」なんてあまり気にしていませんでしたが、本数を重ね適正ウェイトで潜るようになったらすごくダイビングが楽になり疲れにくく、そして楽しくなりました。
そうでなければ、あの頃の私はダイビングのインストラクターなんて目指そうとは思わなかったと思います。
この記事では適正ウェイトがどういうものなのか、そしてその調整の方法などを説明します。
適正ウェイトで潜るようになるとお魚気分でダイビングが楽しめるようになりますよ!
適正ウェイトって一体なに?
その人に合った軽すぎない重すぎないウェイト量のことを言います。
一般的には
- 水面で浮かんだままレギュレーターをくわえBCの空気を全部抜きます。
- 息を吐くと頭まで沈み息を吸うと首辺りまで浮かぶくらいの状態
その時つけているウェイト量が適正ウェイトです。
適正ウェイトであれば潜行時のスピードが自分で調整しやすかったり、水中で中性浮力の調整が簡単にできたり、水中での姿勢が綺麗になるのでフィンキックも上手になります。
無駄なパワーを使わなくなるのでダイビングが疲れにくくなります。
適正ウェイトじゃないとどうなるの?なぜ適正じゃないといけないの?
適正ウェイトでなくてもダイビングは出来ます。ただ、本来必要のない手間や力を使うことになりハードなダイビングになります。
適正ウェイトより少ない時はダイビング自体が難しくなる
ウェイトが足りない時に起こる状況は・・・
- 潜行が大変、またはできない
- 浅場では体が浮くので浮き上がらないようにエビぞり状態でフィンキックを続ける
- セーフティストップの時に浮き上がってしまい減圧症になる危険性がある
ウェイトが少ない時に起こる状況は絶対に避けられない大変な状況ばかりです。
特にセーフティストップ時に吹き上がるのは減圧症の危険がありとても危険で絶対に避けたい状況です。
そのようなことから軽すぎるウェイトになるくらいなら重くしておきたいと考えるダイバーは多いです。
適正ウェイトより多い時は潜れるが初心者スタイルのダイブになる
ウェイトが多い時に起こる状況は・・・
- 潜行時BCの空気を抜いたとたん、どんどん沈んでいく
- 潜行のスピードが速くて耳抜きに失敗したり最悪は鼓膜を破ったりする
- 中性浮力をとるために何度もBCに空気を入れたり出したりしなければいけない
- BCは多く空気を入れるので浮き、腰の部分はウェイトで沈むので立つような姿勢になり、フィンキックで砂をまいたりする
- 浅場への移動時にBCの空気を抜き忘れると浮き上がる
- ウェイトの重さで腰が痛くなる
ウェイトが多い時の方がBCの調節でごまかせることも多いので、ウェイトが多いまま気にせずにダイビングを続けるダイバーがほとんどです。
ただこの項目を見て気が付く方も多いと思いますが、初心者ダイバーそのものだと思いませんか?
これだけの状況を適正ウェイトにするだけで回避できるのですからこれを読んだ皆さんは適正ウェイトにしたいと思ったはずです。
目安とか計算方法とかあるの?・・ありますがあくまでも目安です
適正ウェイトは身長・体重・体脂肪率・肺活量・男性・女性、それにタンクの材質・ウェットスーツの厚さ・・などで変わってくるので正確な適正ウェイト量を計算することは出来ません。ただ、目安になる計算方法はあります。
アルミタンク、5mmのウェット(ワンピース)着用の場合(中肉中背)
適正ウェイトの目安=(体重の10分の1)-1~2kg
*スチールタンクの場合、更に -2kg
目安の適正ウェイト早見表
50kg前後 | 60kg前後 | 70kg前後 | 80kg前後 | |
アルミタンク | 3~4kg | 4~5kg | 5~6kg | 7~8kg |
スチールタンク | 1~2kg | 2~3kg | 3~4kg | 4~5kg |
あくまでも目安ですので実際に海で調整することが大切です。
同じ背格好でも人によって-1~2kg違うことがあります。適正ウェイトが1kg違うだけでも全く感覚は変りますので目安だけでは決めずに必ず調整してください。
この目安はファンダイブの為の目安です。
講習・体験ダイブなどではこれよりも2~4kgまたはそれ以上多くつけていることもあります。
その方が水の中で重力が少ない状態に慣れていない人は体が落ち着くからです。
実際、私が体験ダイブした時のウェイトはスチールタンクで8kgもつけられていました。
そのようなことから講習が終わったら改めて自分の適正ウェイトを調整するのがおすすめです。
適正ウェイトの調節の仕方をおしえて!:安全重視のウェイト調節がおすすめ
一般的に言われているウェイトの調整の仕方はこんな感じです。
水面でレギュレーターをくわえてBCの空気を全部抜き
息を吸った時に水面から顔が出て、息を吐いた時に頭が沈む状態
間違えではないのですが、現場でダイバーを見ているとこれではちょっと疑問を感じます。
それはダイビング開始時、タンクに空気がいっぱい入っている状態でこの調整をしてしまうと最後にウェイトが足りなくなることがあるからです。
特に海外でのダイビングはアルミタンクが多いのですがタンクに空気が入っている時と入っていない時とウェイトにして1~1.5kgほど変わることがあります。
そんなことから安全な適正ウェイトを確認するならダイビングの最後に下記の方法での確認をお勧めします。
安全重視の適正ウェイト調整の仕方・・おすすめ!
安全な適正ウェイトは安全停止時に浮き上がらず水深を保てるウェイト量です。
ダイビング最後の安全停止(セーフティストップ)でフィンを動かさずに中性浮力をとってみます。
その時BCに空気が沢山入っているようならウェイトを減らしましょう。
具体的な調節の仕方は
- BCに空気が入ってないのに最後に浮き上がってしまう:プラス1kg
- BCの空気がほとんど無しならそれが適正ウェイト
- BCの上部だけに空気が入っているよう:マイナス1kg
- BC全体に入っているようならマイナス2kgまたはそれ以上減らしても大丈夫なこともあります。
セーフティストップは3分間以上あるのでその時にバディ同士でBCの空気の入り具合を確認し合うのが良いと思います。(気の利いたインストラクターならその時に確認してくれるかも)
ダイバー
初めてのリゾートでは最初のダイビングのウェイトが少し重めになってしまうかもしれませんが、BCなどで補いつつ安全停止時にウェイトチェックをして減らすことが理想です。
その為にチェックダイブを設けているダイブサイトも多いです。
適正ウェイトって変わらない?・・基本のウェイトを覚えていれば状態が違う時も目安がわかります。
前の項でも少し触れましたが、適正ウェイトは身長・体重・体脂肪率・肺活量・男性・女性、それにタンクの材質・ウェットスーツの厚さ・・などで変わってきます。
ですので違う状況でダイビングするたびに適正ウェイトは変わってくる事になります。
ただ、自分が一番使用するであろうウェットスーツとタンクの時の適正ウェイトを知っておくと応用で違う状況の目安のウェイト量を予想することが出来ます。
ダイバー
私の場合は・・・
・スチールタンク
・ウェットスーツは5mmのワンピース
・体重は55kg位でした。
・脂肪は・・・多め:笑
最初の講習の時
体重の10%にするように言われてたので6kgをつけて講習、講習終了後ファンダイブで適正ウェイトをチェックして3kgになりました。
基本のウェイト量は必ずログブックに記入するようにしましょう。
大事な項目は
- タンクの種類
- ウェットスーツの種類
- ウェイトの量です。
ダイバー
私の基本ウェイトは
*スチールタンク
*5mmワンピースで
・・・3kg!!
基本の適正ウェイト(ウェットスーツ・タンク)を覚えていれば、状況に応じてウェイトをプラスしたりマイナスしたりすれば目安のウェイトがわかります。
あくまでも目安なので正確な適正ウェイトはチェックダイブで確認をして下さいね。
基本の適正ウェイトにプラスする場合
いつものダイビングと違う装備に変えた場合はウェイトの調節が必要です。
それぞれの目安を表にしてみました。
基本装備がスチールタンク・5㎜ワンピースの場合
変更した項目 | プラスするウェイトの量 |
スチールタンクからアルミタンクに替えた | +2kg |
フードベストを中に着た | +1kg |
5mmワンピースから5mmツーピースに替えた | +1~2kg |
5mmワンピースからドライスーツに替えた | +3~4kg |
例)基本のウェイトがアルミタンクであるなら、スチールタンクに替えると‐2kg
2項目以上変更する場合は両方を足します。
例えば・・・
私の場合、基本のウェイトがスチールタンク・5mmワンピースで3kg。
アルミタンクに替えてフードベストを着た場合
3kg+2kg+1kg=6kg。6kgのウェイトが目安と言うことになります。
基本の適正ウェイトから減らす場合
特に海外などに行く場合、ウェットスーツが薄くなるのでマイナスすることが必要です。
基本装備がスチールタンク・5㎜ワンピースの場合
変更した項目 | マイナスするウェイトの量 |
5mmワンピースから3mmワンピースに変えた | -1~2kg |
ウェットスーツを着ないことにした | -2~3kg |
例)基本のウェイトが3㎜ワンピースで5㎜ワンピースに替えたら+1~2kg
その他気を付けたほうが良いこと
ダイビングの装備以外にも時間が経つとウェイトの調整が必要になったり
体型が変わるとウェイトが量が変わるので注意が必要です。
- ウェットスーツに注意
- ウェットスーツがヘタって薄くなるとウェイトが少なくなります。
- 新しいウェットスーツに買い替えた時は同じ5mmでもウェイトが多く必要になります。
- レンタルウェットスーツの場合は毎回適正ウェイトの調整が必要です。
- 痩せたり太ったりしたら注意
厳密に言うと脂肪の量が減ったり増えたりしたら注意です。- 脂肪が増えたら・・・・ウェイトをプラスする
- 脂肪が減ったら・・・・ウェイトを減らす
- 筋肉が減ったり増えたりしたら注意。
- 体重は同じだけど筋肉が減った・・・ウェイトをプラス
- 体重は同じだけど筋肉がついた・・・ウェイトをマイナス
海外でダイビングする場合は確認が必要:キロ・ポンド表示
日本で潜っていたダイバーが海外で潜る時には気を付ける事があります。
日本のウェイトはキログラム表示なのですが海外はポンド表示の場合があります。
1ポンド=0.45キログラム
うちのダイブセンターもそうですが
「ウェイト1キロください」と言われると2ポンドのウェイト玉を渡します。
しかし2ポンドのウェイト玉は約900グラムです。
自分の基本ウェイトから計算して必要なウェイトをキロ表示でリクエストすると足りないことになります。ウェイト玉がどちらの表示のものなのか確認して調節することをお勧めします。
海外のダイブセンターでは3ポンド玉(1350グラム)を用意している場合が多いので
3ポンド玉(1.5キロと呼んでいる)を混ぜてみるなど調整してみると良いと思います。
まとめ
この記事では25年以上現地ガイドとして潜って来たインストラクターが実践してきた安全な適正ウェイトについて説明しました。
安全な適正ウェイトは安全停止がきちんとできるウェイトでなければいけません。
ダイビング最後の安全停止の時に調節をするのがおすすめです。
また、自分が一番潜る状況(タンク・ウェットスーツ)での基本の適正ウェイトさえ覚えておけば
違う状況でも簡単に自分の適正ウェイトの目安がわかることも説明しました。
ただ、あくまでも目安なので必ずダイビング時にウェイト調節を忘れないでください。
適正ウェイトで潜るようになると水中も楽だしスキルもアップします。何よりもダイビング後の疲れがかなり解消されるのでログ付けまでフレッシュな気分でいられますよ!
楽しいダイビングを!!
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